待機児童問題の現状を知りたくありませんか?(待機児童問題の原因と対策のまとめ)

   

待機児童原因対策

待機児童問題の現状はどうなっているのでしょう?

安倍政権は、2017年度末までに待機児童を0にすることを目指しておりましたが、全国83自治体からのアンケートによると、達成できるとした自治体は31%の26自治体にとどまりました。

 

2016年10月10日の時点での自治体数は、市が791、特別区が23、町が744、村が183で合計1,741なので、なぜ83の自治体からしかアンケートをとらなかったのかは、不明です。

 

そもそも待機児童とは、何でしょうか?

 

一般的な感覚で言えば、待機児童とは、保育所へ入所申し込みをしても、定員オーバーで入れなかった子どもの数だと思いませんか。

 

ところが、違います。

 

それは保留児童と言います。

待機児童とは保留児童から以下に該当する申込数を抜いた人数です。

 

①育児休暇中

②求職活動休止中

③他の保育サービスを利用中(認可外やベビーシッターなど)

④特定の園だけを希望

 

保留児童数―(①+②+③+④)=待機児童数です。

 

内容だけ見ると、差し引いても良いかのように思われますが、①の育児休暇中に関しては、待機児童に含めるよう見直しが図られました。

ただし、調査日が職場復帰予定日より前であれば、待機児童から除外されます。

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②の求職活動休止中と言うのは、仕事を探していない人のことではありません。

求職活動をしていてもどこにも子どもを預けていないのであれば、休止中扱いです。

待機児童には含まれませんので、保育所に入れません。

 

そうなると③の状態となるしかなく、認可外保育園に預けて実績を作る必要があります。

 

認可外保育園でも良いかと思われるかもしれません。

例えば、横浜市ですと横浜保育室と言うのがありますが、保育料は58,100円が上限です。

認可保育園での最高ランクD27の3歳児の保育料は43,500円です。

このD27とは市民税所得割額が397,001円以上の方の金額です。

これは、税引き手取り所得が800万円以上の方が該当します。

認可保育園では所得に応じた保育料です。

自治体により違いはありますが、認可外保育園に預けられるほど稼ぐためには、パートでは割に合いません

 

自分の住んでいる地域の保育園に入れるかどうかは、待機児童数をみても意味がありません。

保留児童数を見なくてはなりません。

都道府県で保留児童数と待機児童数を合わせて表にしているところは少なかったため、神奈川県と大阪府の保留児童と待機児童の人数差が多い順ベスト5と東京都全体の状況を表で見てみましょう。

ちなみに神奈川県が保留児童数を公表しだしたのは、2016年からだそうです。

自治体名 待機児童数 保留児童数 保留数と待機数の差
横浜市 2 3,259 3,257
川崎市 0 2,891 2,891
藤沢市 148 611 463
相模原市 0 432 432
大和市 0 273 273
神奈川県H29.4.1 756 9,431 8,675
大阪市 508 4,688 4,180
豊中市 382 1,315 933
堺市 279 1,178 899
吹田市 168 740 572
高槻市 0 522 522
大阪府H28.10.1 3,126 13,214 10,088
東京都H28.7 8,466 10,519 2,053

※東京都の保留児童数とは、申込数から保育所定員数(認可+認証)を引いた数字です。

神奈川県・大阪府は表記していないものも含めた、県と府全体の数字です。

日付は調べられた最新の日付です

 

神奈川県は保留児童の中の待機児童割合がたったの8%とほとんどが保留児童扱いです。

大阪府は23.7%、東京都は80.5%です。

これでは実態が分かりません。

 

2001年に国は待機児童の定義を変え、自治体が独自に助成する認可外保育施設を利用しながら待機している児童は、待機児童から除いても良いことになりました。

それ以降待機児童数はめっきり少なくなりました。

 

2013年に横浜市が待機児童0と発表した時点で、実態を反映していないと話題となりました。

それを受けて2017年4月に厚生労働省が定義の見直しを図りましたが、特に罰則などもないこともあり未だに旧基準でカウントする自治体は多くあります。

神奈川県の横浜市と川崎市は旧定義での待機児童数です。

道理で保留児童数との差が大きいですよね。

 

しかし逆に、育児休暇を延長するために、保育所入所不承知通知が必要なため、入所申し込みをし、入所辞退をしなければならないという状況もあるようです。

これについては横浜市から国へ要望が提出されています。

 

 

待機児童問題の原因とは?!

安倍政権の2017年度末までに待機児童0とするとしていましたが実現は絶望となり、3年先送りが決まりました。

これについて政府は、保育所の定員数は予定通り順調に増やしてきたのに需要の拡大が予定を大幅に上回ったためとしています。

 

保育所を増やそうとしても、保育士が足りないのが現状です。

2015年10月の全国の保育士有効求人倍率はピークとなる1月の前に1.93倍と年々高くなる傾向は続いています。

全国で最も倍率の高い東京都では、5.39倍となっています。

有効求人数は3万8千人です。

しかし、2014年3月の日本保育士協会の調査では「求人を出しても応募がない」との回答が69.6%も占めています。

 

保育士資格を持っている登録者は119万人いますが、保育士として働いているのは43万人だけです。

有資格者の36%しか働いていません。

76万人もの有資格者が保育士として働いていないのです。

 

資格があるのに、保育士として働いていない理由の一番にの安さがあげられています。

2014年度の調査では、税引き前月給が21万円と全職種平均の33万円と10万円以上の差があります。

 

現在の保育所は、生活の場だけではなく教育の場でもあります。

また、子どもや家庭の問題が多様化し複雑化している状況ですので、保育士にはより高い専門性が求められています。

 

幼児期の教育が重要であることは、誰もが知っていることです。

その大事な時期の教育の一端を担う保育士の処遇がなぜこれほど低いのでしょうか。

 

諸外国でも長い間保育士の地位は低かったのですが、保育を教育の一環と位置付けられたことにより処遇改善がなされ、学校教員との格差が少なくなりました。

それと同時に保育士の質の確保のため、能力に応じた区分や免許の更新制などを行なっています。

それにより、キャリアアップも見込めるようになっています。

 

保育士の給与の低さは、制度的な問題です。

認可保育園の財源は補助金と保育料です。

保育料は公定価格のため保育所側で自由に設定ができません。

勤続年数が延びても補助金がそれほど増える訳でもないため、昇給率も低くおさえられています。

補助金は保育所に支払われるため、それが賃金に反映されているかどうかは不透明です。

 

 

待機児童ゼロになるか?!政府の新待機児童対策「子育て安心プラン」について

2017年度末までに待機児童を0にするという目標達成は不可能となり、政府は新たなプランを立てました。

それが「子育て安心プラン」です。

2020年度末までに待機児童を0にし、更に女性の就業率80%を2022年度末までに達成するため、約22万人分の予算を2018年から2019年度末までの2年間で確保します。

 

22万人というのは、2020年度末までに増加する予定のはたらく女性の数です。

主な内容は以下の通りです。

 

1.保育の受け皿の拡大

待機児童の多い都市部への対策と既存施設活用や保育の多様な形態を推進します。

 

2.保育の受け皿拡大を支える「保育人材確保」

保育補助者を育成し、保育士の業務負担を軽減します。

 

3.保護者への「寄り添う支援」の普及促進

待機児童数調査の適正化や保育コンシェルジュによる出張相談などを行ないます。

 

4.保育の受け皿拡大と質の確保

認可外保育施設を中心に、保育の質を確保します。

 

5.持続可能な保育制度の確立

保育実施に必要な安定財源の確保をします。

 

6.保育と連携した「働き方改革」

男性による育児を促進し、研究会を開催し育児休業制度を総合的に検討します。

 

待機児童が問題になった当初にすぐ、保育士の給与の安さが取り上げられていた記憶がありますが、今回のプランには全く入っておりません。

保育士の地位の向上も視野に入っていないようです。

 

女性の就労率の向上を目指しているのは、日本の働く女性が妊娠出産時期の就業率が落ちることを表すM字カーブがあるからです。

このM字カーブは日本以外では韓国に見られます。

政府は女性の就労率をノルウェー並みの80%とすることを目標としています。

 

英国のエコノミスト誌が3月8日の国際女性デーに発表している「ガラスの天井」ランキングというのがあります。

ガラスの天井と言うのは、働く女性にとってキャリアを形成するのに妨げとなる見えない壁のことを意味します。

男女の高等教育や労働力率、賃金、育児費用、育児の権利、ビジネススクールの候補生、議員や管理職の占める割合など10項目を加重平均して算出されます。

 

誰もが予想する通り、上位は北欧が占めます。

2017年発表の順位は、1位アイスランド、2位スウェーデン、3位ノルウェーです。気になる日本の順位は28位とワースト2位です。下には韓国だけです。

これは、給料格差と女性管理職の割合の低さが起因しています。

 

保育士の給与の低さも、こういった男女格差の問題をはらんでいます。

女性が主に働く仕事の給与は仕事内容からみても、低く抑えられがちなのです。

 

待機児童数という定義の不備を無視して、ただ0にすることを目指して、誰がどんな得を得るのでしょうか。まず、そこから考えるべきではないのでしょうか。

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参考URL

 - お役立ち情報, 仕事探し, 子育て支援事業 , , , ,